舞台はナポリ。青年士官のグリエルモとフェルランドは、美しき姉妹フィオルディリージとドラベッラとそれぞれ婚約している。自分の恋人は絶対に浮気しない!と言う二人に対し「女に貞節などない」と主張する老哲学者ドン・アルフォンソ。両者譲らず、どちらの言い分が正しいか賭けをすることになる。青年達はアルフォンソの提案で、出征すると嘘をつき、異国人に変装して互いの恋人を口説くことに!最初は怒って相手にしない姉妹だが、だんだんと心は揺らぎはじめ…。
一途で真面目なフィオルディリージに、お茶目で奔放なドラベッラ。出征した恋人の帰りを待つ姉妹に、危険な恋の誘惑が!モーツァルトの身ぶるいするほど甘美な音楽にのせて、二組の恋人達の愛の行方を描く『コジ・ファン・トゥッテ』。フィオルディリージが恋人への忠誠を誓う「岩のように動かず」や、姉妹の揺らぎはじめた心が波乱を予感させる一幕フィナーレの六重唱など、ドラマティックなアリアから精緻なアンサンブルまで、オペラのありとあらゆる“歌”の美しさが味わえる傑作です。中でも遂にフィオルディリージが新しい恋人の胸におちる二重唱「私はまもなく恋人の」は、モーツァルトがもてる天才の全てを注ぎ込んだ、オペラ史上最高に甘美な“陥落”の歌。これを聴いて『コジ』に陥ちない人はいないはず!?笑いあり、スリルあり。モーツァルトの遊び心が溢れるこの傑作に、今夏、マエストロ佐渡裕が生き生きと命を吹き込みます。佐渡裕のタクトが握る、恋人達の運命にご注目ください!
男と女の思惑がからみあう、『コジ』。最高度の演技力と歌唱力が求められる難役に、まさに今が旬!なダブルキャストが実現しました。フィオルディリージ役には、2013シーズンメトロポリタン歌劇場で同役を歌い、大絶賛を受けたスザンナ・フィリップス。そして美貌と美声を併せ持つスター・ソプラノ小川里美を迎えます。さらにドラベッラ役にはメトで主要な役に次々抜擢され、ブレイク秒読みのサンドラ・ピケス・エディと上海出身、欧州の歌劇場で活躍するフイリン・チュウを招へい。グリエルモ役にジョン・ムーアとキュウ・ウォン・ハン、フェルランド役に、チャド・シェルトンとジョン・健・ヌッツォなど、煌めく才能が勢ぞろい。舞台、客席を巻き込んで手に汗握る恋の心理戦を繰り広げます!
今回佐渡とタッグを組むのは、メトロポリタン歌劇場の首席演出家、デヴィッド・ニース。日本では小澤征爾氏との厚い信頼関係で知られ、これまでサイトウ・キネン・フェスティバルや小澤征爾音楽塾で数々の作品を手掛けてきたベテランです。ニースが今回提示するのは “モーツァルトの時代の劇場にいるような”優雅で洗練された舞台。ロココ調の繊細な調度品、絹やレースを贅沢にあしらった衣裳など、丹精に組み上げられる舞台はまさに“これぞオペラ!”。さながら映画『アマデウス』の世界のような、美しき舞台にご期待ください。