2015.03.31
裏社交界の華、クルティザンヌ(高級娼婦)
前回ご紹介したように、『椿姫』のモデル マリー・デュプレシは、パリの裏社交界に燦然と輝く、いわゆる「高級娼婦」でした。彼女たちは、「娼婦」といっても、美貌はもちろん高い教養や上品な作法を身につけた女性たちであり、世間からは憧憬のまなざしすら浴びていたといいます。多くは庶民のなかから美人で頭のいい少女が、あるいは女優などが、貴族の男性に見出され教育されて一流のレディに仕立てあげられる、ということだったよう。彼女たちが歩いていると、ほんものの貴族の女性と見分けがつかないほどだったといいます。
歴史的にその成立背景をたどっていくと単純に語れる内容ではないのですが、このように、単なる売春ではなく、上流階級や知識人の男性たちのお相手をすることを生業とした女性たちは、古代より脈々と存在していたようです。
『椿姫』の約100年前のフランス宮廷内、貴族どころかルイ15世の愛妾として昇りつめた市民階級出身のポンパドゥール夫人や、さらに貧しい出のデュバリー夫人などは、ある意味では最も成功した高級娼婦と言えるかもしれません(皮肉なことに、デュバリー夫人はフランス革命でギロチンにかけられてしまいましたが)。革命の後、政情が不安定になったフランスでは、しばらくこの種の女性は影をひそめますが、1830-40年代、産業革命により富を得た貴族あるいは新興貴族を中心に、
「高級娼婦」たちのニーズは高まったようです。