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2025.01.31

「さまよえるオランダ人」記者会見レポート!

「さまよえるオランダ人」記者会見レポート!

2025年、開館20周年を迎える芸術文化センターが、満を持して挑むワーグナーの傑作オペラ「さまよえるオランダ人」。雄弁な音楽、スペクタクルな舞台とともに、いざゆかん、壮大なるオペラの大海原へ──!
1月中旬に行われた記者会見において、佐渡裕芸術監督、ダーラント役の妻屋秀和さん、舵手役の清水徹太郎さんが登壇し、ゼンタ役の田崎尚美さんはメッセージ動画で、それぞれ意気込みを語りました!

■「さまよえるオランダ人」特設ウェブサイトはこちら■

佐渡 裕(芸術監督・指揮)

震災30年への想い、満を持して取り組むワーグナー

この20年間、プロデュースオペラでは、イタリア・オペラを多く取り上げてきました。対して、ドイツ・オペラの最高峰であるワーグナーには、以前から、いつか挑戦したいと思っていました。ドイツ・オペラは、音楽が非常に面白いのです。その究極にあるのが、やはりワーグナーだと思います。今回は、ワーグナー作品の中で上演時間が比較的短く、初めてのお客様でもワーグナーの世界に入り込みやすいのではとの思いから、「さまよえるオランダ人」を選びました。
その魅力のひとつは、オーケストラが色々な情景を音で表すということです。荒々しい海のしぶきや波などを、オーケストラがまるで視覚的に、目に見えるように演奏します。そして、テーマがとても明確です。こうもはっきりとテーマが出てくるのは、ワーグナーの特徴ではないかと思います。

もうひとつの魅力は、呪われたオランダ人が「愛によって救済される」という献身による救済の物語ですね。
昨年末のジルヴェスター・スペシャル・コンサートから、芸術文化センターの「20周年」の企画が始まりました。芸術文化センターが開館20周年を迎えるということは、阪神・淡路大震災から30年を迎えるということでもあります。震災の衝撃というのは非常に大きかったと思いますし、一番忘れてはいけないのは、たくさんの犠牲者が出たということです。そういう人たちの思いを引き受けて、「心の復興のシンボル」として、この劇場ができました。芸術文化センターは、常に「命」と向き合っています。私は指揮者ですから、音程を直したり、テンポを作ったり、美しいフレーズを作っていくということが仕事なのですが、やはり芸術監督としての私の中にあるのは、この劇場の「心の復興のシンボル」としての背景であり、そして「祈る」ということです。「祈り」は、未来に繋がっていく、「誓い」でもあると思います。

頼れるチームが再集結、高まる期待

私は、オペラ自体もそれほど経験がない30代の頃、初めて本作に取り組みました。そういう意味では、私にとっても非常に思い出深い作品です。
オペラはチーム戦です。劇場のこと、そして毎夏のお客様の熱狂ぶりも知っている、演出家ミヒャエル・テンメさんをはじめとした「魔弾の射手」を作ったチーム──彼らとまた一緒に仕事できるということも、私にとってとても大切なことです。まさに、20年で得た大きな宝物ですね。
音楽的にも、それから精神的にも、一度、ともに成功を経験しているチームとだからこそ取り組めることがあります。テンメさんが壮大な海のシーンを作ってくれるんじゃないかと、非常にワクワクしています。合唱やソリストたちの魅力、ワーグナーの非常に精神的に高いものを感じていただけるオペラになると思います。たくさんの方に、ワーグナーの世界を味わっていただきたいです。

 

田崎尚美(ゼンタ役)※メッセージ動画での出演

ゼンタは「推し」のために本気になれる、夢見る少女

プロデュースオペラは初出演です。というよりも、兵庫県で歌わせていただくこと自体が初めてなのです。毎年本当に話題になっていて、多くのお客様が来られて、たくさんの方に喜ばれているという、そういうイメージのある公演です。その一員として関われることを、とても嬉しく思っております。
「さまよえるオランダ人」という作品に関わらせていただくのは5プロダクション目になりますが、過去の公演の際も、船の上で救済のフレーズが歌えることをとても喜ばしく感じていました。本作は、ワーグナーにとっては初期の作品ですが、音楽的にはベルカント作品と言いますか、そういう要素が歌い手にとっても必要になってくる作品と感じています。

ゼンタ役に関しては、オランダ人への強い憧れ、今で言う「推し」の存在にどのぐらい本気になれるかということがとても大切なのではないかと思います。演技的なことで言うと、「夢見る少女」という要素を持つことも、とても重要なのかなと。また、作品の魅力として第一に挙げられるのは、ワーグナー自身が台本を書いているということです。ワーグナーは、一切妥協せずに、たったひとりで、音楽と芝居とを融合させて劇を作り上げています。言葉と音がリンクしている作曲家だからこそ、勉強していても楽しいなと感じますね。
今回のプロダクションも、間違いなく心に残るものだと確信しております。精一杯頑張らせていただきます。

 

妻屋秀和(ダーラント役)

物語にアクセントを与えるダーラント、思い出深い役

兵庫県立芸術文化センター20周年、本当におめでとうございます。この記念すべき20周年という節目のプロデュースオペラ、しかもワーグナーで、そのうえ「さまよえるオランダ人」に参加させていただけるということは、自分にとっても非常に意味深いです。といいますのは、私がドイツにいる時、ワーグナー作品の中で初めて主役級を演じさせてもらったのがダーラントだったのです。とても思い入れのある役ですね。
そして、マエストロもおっしゃっていたテーマ、やはり「愛」と「救済」、そして「献身」。贖罪があって、そして救済がある。しかしながら、私の演じるダーラントは、そういった部分には一切関わらない役です。非常に世俗的と言いますか──ダーラントの存在によって、救済の物語に、ひとつのアクセントを与えるという役でもあるかと思います。救済と贖罪に対する、お金や、宝石など、演じる中で、そうしたコントラストを描ければいいなと思っています。
やはりテンメさんの存在も大きいですね。過去に出演した「魔弾の射手」でも非常にお世話になりました。今回もどんな演出をしてくださるのか、とても興味がありますし、また一緒に仕事ができることを、大変嬉しく思っております。
出演者についても、田崎さんとは過去一緒に歌わせていただいたことがあります。清水さんとも、日本で最初に「オランダ人」を歌わせていただいた時の舵手役が彼で、とても運命的な繋がりを感じています。どうぞ皆さん、ご期待ください。

 

清水徹太郎(舵手役)

自分の指針ともなる運命的な出会いと、奇跡の共演

私は兵庫県神戸市の出身で、佐渡芸術監督の大学の後輩でもあります。開館後まもない2007年「魔笛」公演から合唱へ出演させていただいておりまして、当時のことを振り返ると懐かしい思い出が蘇り「このシーン楽しかったな」といったたくさんの思い出があります。本公演が今から本当に楽しみです。
私は声楽を始めたのがちょうど阪神・淡路大震災のあった1995年頃です。その後、声楽の道を志し、歩みを進める中で、あるおふたりとの運命的な出会いがありました。おひとりは、私が学生時代に関西二期会で活躍されていた田原祥一郎先生です。私は元々バリトンで活動していたのですが、先生と出会ったことですぐに声域が3・4度上がるという、声楽としては奇跡のようなことが起きまして、それ以降テノールとして活動することになりました。

そして実はもうひとりが、今回共演させていただく妻屋さんなのです。私が初めて出演した「さまよえるオランダ人」の公演で、私が演じる“舵手”が仕事に疲れて居眠りをしてしまうシーンがあるんです。そこで、妻屋さん演じる“ダーラント”に「何をやっているんだ!」と胸ぐらを掴まれて、ゼロ距離で怒鳴られるんですね。この時の妻屋さんの声の迫力が、もう本当にすごくて、世の中にこれほど声で感動させられる方がおられるんだと衝撃を受けました。またいつか一生のうちで、もう一度妻屋さんと「さまよえるオランダ人」でご一緒させていただければと願っていたところ、今回奇跡のようなお話をいただけて、とても楽しみに思っています。
妻屋さんをはじめ、他の出演者の皆さんも本当に素晴らしい方ばかりです。是非ひとりでも多くのお客様にご来場いただけることを心より願っています。

■「さまよえるオランダ人」特設ウェブサイトはこちら■

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