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2026.09.02

【劇場を楽しむ③】芸術文化センター舞台裏探訪

【劇場を楽しむ③】芸術文化センター舞台裏探訪

年間約650回もの公演を皆さまにお楽しみいただいている、兵庫県立芸術文化センター。
そのホールには、お客様により素晴らしい鑑賞体験をしていただくための工夫が随所にあります。
オペラが上演されるKOBELCO大ホールを中心に、その知られざる裏側の一部をご紹介いたします!

◎多彩な公演に対応できる舞台

まずは、舞台の上からご案内を始めましょう。
オペラやバレエでは舞台装置や背景幕が、コンサートでは豊かな響きを客席に届けるための音響反射板が見えます。
当ホールでは日々、様々な形態の舞台仕様に対応するため、重さ約130トンもある音響反射板を、6分で舞台上から舞台奥の広大な空間にまで自走させ、収納できるようになっています。

巨大な箱のような音響反射板がレールの上を自走します。

ところで、音響反射板の壁をよく見ると、垂直ではなく、段ごとに異なる角度がついていることが分かります。
それは客席の壁も同じです。壁に角度をつけることで、舞台上で演奏された音の響きが客席に均一に届くように設計されているのです。

響きの伝わり方は、ホールの設計時に1/10の模型を作成し、音響実験を行って検証されました。
満席時の残響は、反射板を設置した場合には2秒、設置していない場合には1.4秒になるように設計されています。

開館前、音響の検証に使用した1/10模型に入る佐渡裕芸術監督。(2003年8月)

客席の壁にも角度がついています。

◎こんなに広い!舞台空間

舞台の奥に音響反射板を収納できるということは、そこには相当広い空間があるわけですが、実は、舞台の左右にも舞台と同じだけの広さがあります。
なぜなら、バレエやオペラでは場面によって舞台装置を入れ替えるため、各場面分の装置を待機させる場所が必要だからです。

それは、舞台の上部も同じ。そこには幕や装置、照明機材を吊る竿のような「バトン」があるのですが、それらを昇降して場面転換をすることもありますから、舞台の高さと同じだけの空間が、上部にも必要なのです。

KOBELCO大ホールの舞台図面。舞台(青く塗った部分)と同じ広さの空間が舞台の左右と奥にあります。このような造りの「四面舞台」の広さを有する劇場は、国内ではごくわずかです。

さらに舞台の下、「奈落」から装置や演者を昇降させる「迫り(せり)」を使った転換方法や演出もあります。
奈落にも舞台と同じ高さの空間を設けている劇場もありますが、当センターの奈落は、それほどの深さがありません。
その理由の一つは、センターの地下には西宮市南部の酒どころへと続く「宮水」が流れているから。
おいしいお酒を守るため、深く掘ることができなかったのです!

「迫り(せり)」で出演者が舞台下から登場する演出。(2018年「魔弾の射手」より)

◎オーケストラピット

舞台の下に目を向けたところで、次はオペラやバレエの上演時にオーケストラが演奏する、オーケストラピットを覗いてみましょう。
客席の前方XA列~XE列の部分は昇降し、客席としても、舞台の一部としても、オーケストラピットとしても使用できます。

オペラでは、オーケストラの編成は、作品によって異なります。そのうえで、歌手の声との最適なバランスをとらねばなりません。
客席でのオーケストラの音の聴こえ方は、オーケストラピットの深さによっても変わりますから、その調整をリハーサル時におこない、音のバランスを確認しています。

オーケストラピット。指揮台の後ろの壁だけ白いのは、黒い衣裳を着た指揮者を奏者に見えやすくするためです。

オーケストラピットの中から舞台上を見上げた写真。編成の大きな作品の場合、通常のピット内にはオーケストラが入りきらないため、舞台下に拡張された「ワーグナー・ピット」という空間も使用します。(2025年「さまよえるオランダ人」カーテンコールより)

◎ホールの上部

さて、今度はホールの上部に目を向けてみましょう。
1階席から4階席のさらに上を見上げると、照明が並んでいるのがお分かりいただけるでしょうか?
天井に近いところは、「シーリングライト」といって舞台全体を前から照らす照明、そして4階客席の上にあるのが「ピンスポットライト」といって出演者などを際立たせたいときにピンポイントで狙う照明です。

写真上部に見えるのがシーリングライト、一段下で客席後方側に位置するのがピンスポットライトを設置する部屋。

舞台側の上部に移ると、そこには装置や機材を吊る「バトン」が並んでいます。
これらのバトンは全部で58本あり、1本につき最大1.2トンまでの装置や機材を吊るすことができます。
また、昇降スピードは秒速1mmから2000mmまで調整することが可能で、多様な演出や作業に対応できるようになっています。

舞台の上部に並ぶバトン。舞台から20mの高さで撮影。

◎楽屋

続いては、楽屋エリアをご案内しましょう。
ここには大小14の楽屋のほかに、衣裳室や床山室、小道具室、洗濯室などが配置されています。
楽屋では、たくさんの出演者が快適に過ごせることも重要ですが、様々なスタッフにとっても使いやすい場所でなくてはなりません。

大楽屋

オペラやバレエ、演劇ではたくさんの衣裳を使用するため、衣裳スタッフは、準備や修繕、着用の補助など、多くの作業をこなします。
衣裳のメンテナンスにあたっては、今時珍しい二層式の洗濯機や、アイロン、スチーマー、扇風機などが完備されています。

楽屋の廊下にずらりと並べられた衣裳。役や着用するシーンがタグ付けされ、分かりやすいようにセッティングされています。(2023年「ドン・ジョヴァンニ」より)

またヘアメイクやかつらは、時間割に沿ってスタッフが順に出演者に施していきますから、道具が並べやすい化粧前や、大きな鏡など、使い勝手を考えた楽屋の造りになっています。

かつらはマネキンヘッドに乗せて保管されます。(2023年「ドン・ジョヴァンニ」より)

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