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2023.06.09
「ドン・ジョヴァンニ」ドンナ・エルヴィーラ役 池田香織 スペシャル・インタビュー
日本を代表するメゾソプラノの池田さん。芸術監督プロデュースオペラには初登場となります!ドン・ジョヴァンニを追い続ける女性ドンナ・エルヴィーラ役への意気込みをうかがいました。
−池田さんはワーグナー作品など大規模な公演での話題が多いですが、モーツァルト作品はどのようなレパートリーなのでしょうか?
私がプロのオーケストラと初めて共演したのは、オーケストラ・アンサンブル金沢の「モーツァルト全集」という企画で「フィガロの結婚」ケルビーノ役だったのです。その後、フルステージ上演でモーツァルトのオペラを初めて歌ったのは2004年の文化庁新人公演「フィガロの結婚」マルチェリーナ役でしたが、実は今回はそれ以来のモーツァルト・オペラです。
当初はこのような“軽い声の役”を歌っていたのですが、小山由美さんに師事するようになり“大きな声の役”を勧められてワーグナー作品も歌うようになりました。ただ、彼女はドイツ在住で頻繁にはレッスンを受けられなかったので、自身で勉強するときには、ワーグナー等ばかり歌って声を壊さないよう、声を整えるという意味でもモーツァルト作品を練習していました。器楽にもいえることですが、テクニック、音楽性共に音楽家にとっての基礎のようなものがモーツァルト作品にはあります。その点で、常にそこに立ち返るようにしていました。
−久しぶりのモーツァルト作品、その面白さはどこにあると感じますか?
まず、ワーグナーのオペラでは同じ歌詞を繰り返すことはあまりないのですが、一方のモーツァルト・オペラの妙は、同じ歌詞を繰り返しながら盛り上がっていくというところにあります。またワーグナーではほとんどの場合、一人ずつ歌うのに対し、モーツァルトでは5、6人で歌う重唱の楽しさがあるのが対照的です。
−エルヴィーラ役での出演は初めてとのことです。
以前にカヴァーの依頼をいただいたことがあり、その時はお受けできなかったのですが、以来ずっと気になっていた役でした。私は人間臭い役を歌うのが好きですし、自分の暗めの音色の声にもこの役が合っているかと思います。
音楽的には、ずっとテンションが高いのにエレガントである、というところのバランスが難しくて面白い。キャラクターとしては、ややおせっかいな長女のようなイメージがあり、私も三人きょうだいの一番上なので共感しています(笑)。
エルヴィーラの視点で見たとき、ドン・ジョヴァンニに対して「魅力があるからこそ憎い」というところは女性としてよく分かる。一方で、自分も年齢を重ねると、「もうちょっと落ち着きなさい」と言いたくもなる(笑)。それに、「生きている限りは楽しまなきゃ」というドン・ジョヴァンニの立場も分かるようになってきたので、両者のキャラクターを俯瞰で見ると面白いですね。
−今回の共演者についてはいかがですか?
歌手の方々は、歌はもちろん、それ以外の点でも演者として魅力的で芸達者な方が揃っているので、これからの稽古が楽しみです。佐渡裕芸術監督とは初共演となりますが、20年以上前に合唱の一員として、その指揮で歌ったことがあります。指揮台に乗った瞬間にエネルギーを放たれていて印象的でした。
−お客様に向けて、ひとことお願いします。
オペラは理解しなければ観られないというものではないので、音楽を聴いて、ただその場を味わっていただければと思います。私たちも絶対に皆様を楽しませられるよう、お稽古を重ねてお待ちしております!
2019年PACオーケストラの定期演奏会では下野竜也さんの指揮でワーグナー「ヴェーゼンドンクの歌」を好演。「自分の出番の後、ブルックナーの交響曲は客席で聴かせていただきました。その際に、お客様が垣根なく音楽と劇場空間を楽しんでいらっしゃると感じました。」とホールの印象を語ってくださいました。
レポレッロ役の平野和さんとのツーショット。