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2024.10.17

【見どころ聴きどころ②】キーワードで知る!バロック・オペラ「オルフェオ」

【見どころ聴きどころ②】キーワードで知る!バロック・オペラ「オルフェオ」

「決して振り返ってはいけない」
そう言われながらもつい禁を破ってしまう、人類普遍の物語。その中でも有名なギリシャ神話「オルフェオ」のエピソードを題材に、約400年前、のちに「オペラ」と呼ばれる音楽劇を花開かせたモンテヴェルディの傑作を濱田芳通&アントネッロが上演します!
「バロック・オペラって興味はあるけどどんなもの?」という未体験の方にもきっとお楽しみいただける本作品。濱田さんのコメントを交えながら、4つのキーワードごとに作品に迫ります。

公演詳細はこちら(特設サイトへ)
2025年2月15日(土)・16日(日)
開館20周年記念公演/バロック・オペラ・エボリューション2025
濱田芳通&アントネッロの「オルフェオ」

キーワード①ルネサンス

中世のキリスト教中心の世界から脱し、古代ギリシャ・ローマ文化に回帰することを目指した文化復興運動=ルネサンス。
その末期にあたる16世紀後半のイタリア・フィレンツェでは「カメラータ」と呼ばれる知識人たちのグループが、古代ギリシャ劇の再興を目指しました。
彼らの研究の結果、語りと歌を融合した唱法「レチタール・カンタンド」(後に解説を記載)による音楽劇が形成されます。
しかしながら当然、音源資料もない時代のことですから、彼らがどこまで本当のギリシャ劇に迫れたのかは疑わしいところ。
「ギリシャ劇を再現しようとして、まったく新しい芸術を創ってしまったのかもしれない」のがオペラの始まりなのです。
フィレンツェで「ダフネ」(1598年)と「エウリディーチェ」(1600年)がその最初期作として上演され、知識人や宮廷人の注目を浴びます。
その後1607年にマントヴァで上演されたモンテヴェルディの「オルフェオ」は、先に上演された作品を参考にしつつも、それらに比べ、音楽的な発展を見せることとなります。

指揮を務める濱田芳通さん

キーワード②モンテヴェルディ

濱田さんによれば、「フィレンツェで上演されたカメラータのオペラが“語り”偏重だったのに対し、モンテヴェルディはより“音楽”を充実させた」とのこと。
「『オルフェオ』の冒頭で“ムジカ”つまり“音楽”の役が物語の開幕を告げる、ということが象徴するように、モンテヴェルディは音楽を重視しました。
するとこの音楽主体の劇の新しさが当時の人々に受けて、このジャンルの人気が出たのです。オペラの面白さを広めたのがモンテヴェルディの功績だといえるでしょう」(濱田さん)。

そう、モンテヴェルディこそがオペラという芸術を大成させた立役者と言って過言ではありません。
彼がいなければ、もしかするとオペラの歴史は変っていたかも?しれませんね。
また、マドリガーレ(イタリア歌曲の一形式)の分野でも革新性を示し、ルネサンスではご法度だった不協和音の使用なども、求める表現のためには辞さなかったモンテヴェルディ。
保守派からの批判に対しては、「“第一作法”というべき旧習に対して、言葉の意味や感情をもっと直接的に伝える“第二作法”があって、自分は従来の音楽理論には囚われない音楽を目指す」と反論しました。
こうして音楽をより“音楽らしく”、心に訴える芸術に昇華させていったのです。

クラウディオ・モンテヴェルディ(1567-1643)

キーワード③レチタール・カンタンド

カメラータが 「歌うように語る唱法=レチタール・カンタンド」を確立した頃、彼らが“語り”を優先していたのに対し、モンテヴェルディはより“歌心”を膨らませます。
このレチタール・カンタンドは、後にレチタティーヴォ・セッコ(語る部分、以下レチタティーヴォ)とアリア(歌う部分)に分化していきます。“歌うように語る“といえば、ヘンデルやモーツァルトのオペラでのレチタティーヴォをイメージされる方も多いでしょう。
「現在ではレチタティーヴォは、リズムを無視した、“語り”のような歌われ方が多いと思いますが、私はレチタティーヴォにしても、レチタール・カンタンドにしても、よりリズムを重視し、“歌的”であるべきだと考えています。なお、『オルフェオ』は全編がレチタール・カンタンドで演奏されますが、歌い上げるところがあったり装飾を入れたりする、後の時代のアリアに近い曲もあります」と濱田さん。
言葉が、よりエモーショナルな“歌”となって飛躍したモンテヴェルディのレチタール・カンタンド。後の時代には姿を変えて見られなくなってしまった、“オペラ黎明期のスピリット”がここに凝縮されているのです。

◆イメージ◆
オペラの始まり、こうだったかも??

キーワード④オルフェオ

主人公オルフェオは、太陽神アポロを父に持つ詩人であり竪琴の名手。その妻エウリディーチェは、新婚まもなく毒蛇に噛まれて命を落とし、冥界へと去ってしまいます。オルフェオは妻を取り戻すため、竪琴の力を使って冥界にくだり、その王・王妃を説得してエウリディーチェを連れ帰ることに。しかし帰途で、「振り返ってはならない」という冥王との約束を破ったためにエウリディーチェを失う、という筋書きです。
妻が本当についてきてくれているのか不安になって、つい振り返ってしまう…日本の神話、「イザナミとイザナギ」のエピソードにもよく似ていることで有名です。
「オルフェオは、当時の欧州文化人ならば誰もが知っていたキャラクターで、“音楽の力”の象徴であったことから、初期のオペラの題材に多くとり上げられたと考えられます」(濱田さん)
なお、モンテヴェルディ「オルフェオ」の約120年前には同じマントヴァで、あのレオナルド・ダ・ヴィンチがプロデュースした「オルフェオ物語」という祝祭劇が上演されました。後の時代にはグルックのオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」が上演されたり、オッフェンバックのオペレッタ「天国と地獄」でこのエピソードがパロディ化されたりもしています。

フェデリコ・セルベーリ(1625–1700以前)の絵画「オルフェオとエウリディーチェ」

◆上演概要◆

[指揮]濱田芳通 (オフィシャルサイト)
[演出]中村敬一 (オフィシャルサイト)

[出演]
オルフェオ:坂下忠弘 (オフィシャルサイト)
エウリディーチェ:岡﨑陽香
ムジカ/プロゼルピナ:中山美紀 (オフィシャルサイト)
メッサジェーラ:彌勒忠史 (オフィシャルサイト)
スペランツァ:中嶋俊晴 (オフィシャルブログ)
プルトーネ:松井永太郎
ニンファ:今野沙知恵
牧人:中嶋克彦 (オフィシャルサイト)
牧人/精霊:新田壮人
牧人/精霊:田尻健 (オフィシャルブログ)
アポロ:川野貴之 (オフィシャルサイト)
カロンテ:目黒知史

合唱:田崎美香
合唱:近野桂介 (オフィシャルサイト)
合唱:酒井雄一

管弦楽:アントネッロ
ヴァイオリン 天野寿彦 吉田爽子 宮崎蓉子
ヴィオラ 丹沢広樹
ヴィオラ・ダ・ガンバ/リローネ 武澤秀平
ヴィオローネ 布施砂丘彦
コルネット 濱田芳通 細川大介
コルネット/ナチュラル・トランペット 得丸幸代
サクバット 南 紘平 野村美樹 栗原洋介
ファゴット 長谷川太郎
リコーダー 織田優子
リュート 高本一郎
ハープ 伊藤美恵
チェンバロ/ハープ 曽根田駿
オルガン/レガール 上羽剛史
パーカッション 立岩潤三

共同制作:兵庫県立芸術文化センター/神奈川県立音楽堂/アントネッロ

日時:2025年2月15日(土)、16日(日) 2:00PM
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
入場料:A12,000円 B8,000円 C5,000円(消費税込)
チケット発売日:9月5日(木)センター会員先行予約開始/10月20日(日)一般発売
問合せ:芸術文化センターチケットオフィス 電話0798-68-0255
主催:兵庫県、兵庫県立芸術文化センター
ご予約は公演カレンダーより

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ワンコイン・プレ・レクチャー
いま聴きたい感じたい!バロック・オペラ『オルフェオ』の魅力

10月30日(水) 11:30AM/2:30PM 阪急中ホール
全席指定500円(税込) 発売中
講師:濱田芳通、中村敬一 ゲスト:中山美紀、坂下忠弘、高本一郎
ご予約は公演カレンダーより

公演前日!トークセッション
2025年2月14日(金) 11:30AM 阪急中ホール
濱田芳通、中村敬一が公演前日の舞台でトーク!
※入場無料(要事前申込)・自由席
お申込みはこちら

神奈川公演のご案内
2025年2月22日(土)、23日(日・祝) 2:00PM 神奈川県立音楽堂
詳細はこちら

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