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2023.02.22

「ドン・ジョヴァンニ」記者会見レポート!

「ドン・ジョヴァンニ」記者会見レポート!

モーツァルト至高の音楽、正統派の豪華な舞台、世界で活躍する歌手たちの競演でお送りする、夏のプロデュースオペラ「ドン・ジョヴァンニ」。2月中旬に神戸女学院小ホールで記者会見を開催しました。佐渡裕芸術監督、ドン・ジョヴァンニ役の大西宇宙さん、ドンナ・アンナ役の高野百合絵さんが登壇し、上演への意気込みを語りました!

佐渡 裕(芸術監督・指揮)

モーツァルト4大オペラの締めくくり

モーツァルトの作品は、当センターが開館間もない2007年に「魔笛」を取り上げました。2014年に「コジ・ファン・トゥッテ」、2017年に「フィガロの結婚」を上演しましたが、開館20年の区切りまでにモーツァルト4大作品をご覧いただきたいという思いがあり、その締めとして今回の「ドン・ジョヴァンニ」が決まりました。

私は、年に何ヶ月かはオーストリアのウィーンで過ごしています。家の前にはモーツァルトが最初に住んだアパートがあり、もうワンブロック行けば「フィガロの結婚」を書いたアパート、左に曲がれば亡くなったアパートがあり…という風に私の家から100メートルくらいの範囲に、モーツァルトに縁のある場所や歩いた道があります。ウィーンにいると、モーツァルトの作品が非常に身近になり、ウィーンの人たちが、あるいは世界中の人が、モーツァルトをいかに愛しているかというのをひしひしと感じます。

「ドン・ジョヴァンニ」は非常にドラマティックな作品です。その魅力は、悲劇と喜劇が混ざったような不思議なモーツァルトらしさにあるのではないかと思います。序曲は地獄や死を表すような音楽で始まります。一方、口説くシーンの歌唱では非常に優美な旋律を奏で、あるいはいたずら好きな面が見える楽曲もあります。このようにモーツァルトは、音楽の多面性で何層にもなった劇空間を「ドン・ジョヴァンニ」の中に作っていきました。まるで劇場に音楽を張り巡らせて皆さんを閉じこめているかのよう。その中で繰り広げられるという面白さに満ち溢れた作品なのです。モーツァルトのオペラの世界観を久しぶりに芸文センターで皆さんと届けられることを大変楽しみにしています。

デヴィッド・ニースさんとともに作る作品はこれで3作目になります。非常に信頼のおける演出家です。華やかでモーツァルトらしく、作品の本質を絶対に失わず、それでいて飽きないステージが期待されます。

今年も、熱量に満ちたステージに

芸術文化センターが開館してから18年、お客様方に本当に愛されて、このシリーズは、夏のお祭りのようになってきました。私自身、劇場空間に身を置くのが大好きなのですが、演者から発せられるエネルギーを受け止めた2000人のお客様が、それをまた舞台に返してくれる、そうした熱量の動きを非常に感じられる劇場になってきたと思います。今年も、その熱量をしっかり味わっていただけるような、センターの歴史の中で誇れる舞台にしたいと思います。

 

大西宇宙(ドン・ジョヴァンニ役)

バリトンが歌う“究極の役”で、プロデュースオペラ初出演

ドン・ジョヴァンニ役は色々な要素が詰まった究極の役。非常に人間味があるけれど、女性を誘惑する力があると同時に危険な人物であるという風に言え、声や音楽性、演技だけではなくカリスマ性そのものが問われる役です。それを初出演となる本プロデュースオペラで演じさせていただくというのは良い挑戦であり、今からわくわくして武者震いしています。

このオペラを考えたときに、最終的にこの登場人物のうち誰が幸せになるのか、ということを考えると非常に興味深いですね。私が以前に住んでいたニューヨークは、実は、台本作家のダ・ポンテが生涯の最期を過ごした地であり、彼とモーツァルトが創作したオペラについて、当地で色々と学ぶ機会を得ました。初演された当時はそれまでの階級制度、価値観がひっくり返る革命の前夜であり、ドン・ジョヴァンニや周りの登場人物がいかに時代の変化に立ち向かってどのような生き方をしていくのか、というところも、テーマの一つとして作品の根底にあるような気がします。モーツァルト自身ももう少し長く生きていれば、市民階級の興隆の流れに乗って、時代をリードした存在になっていたと思いますが、その直前の時代にあって、「ドン・ジョヴァンニ」は特権階級への抗議を堂々と素晴らしい音楽に包んで主張している、非常に勇気のある芸術作品だったのではないかと思います。デヴィッド・ニースさんは非常に綺麗な舞台を作る方で、作品に対する読み込みが深い印象があります。以前にご一緒したプロダクションでは、言葉の隅々まで理解して演出されていましたので、今回もどのような人物描写をするのか楽しみです。

初共演となる佐渡裕マエストロは学生時代から憧れの存在でした。そのもとでこの究極の役をできることになり、過去の自分に、「将来、隣に座って記者会見をしているんだよ」と言ってあげたいと、感慨深い気持ちです!

 

高野百合絵(ドンナ・アンナ役)

一昨年の大抜擢後、さらに経験を積んで挑むドンナ・アンナ

2021年「メリー・ウィドウ」ハンナ役での出演をきっかけに沢山の方に高野百合絵を知っていただいたことで、皆様に応援していただけることに繋がり、オペラやコンサート、メディア等の出演の機会も多数いただきました。改めて、ハンナ役という大役を務められたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

今回演じるアンナという役は、芯がしっかりある一方、ドン・ジョヴァンニとの出会い、父親の死をきっかけに、初めて湧く感情に心が揺れ動く女性です。感情を表に出さないところもある箱入り娘なのですが、物語が進むにつれて、自分で人生を切り開いていこうという強い部分も見えます。そういったアンナの表現を、モーツァルトの美しい旋律で表現するのは大変難しいことです。また、この役のお話をいただいてから、イタリアやオーストリアでもじっくりと勉強し、色々な上演を観たのですが、アンナというのは演出により様々な解釈がありうる役どころ。この物語はアンナの部屋ではじまりますので、最初のシーンでのアンナの見せ方によって、ドン・ジョヴァンニの見え方、あるいはこの物語の見え方も変わってきます。とてもやりがいのある重要な役ですので、皆様と一緒に作品を作り上げていくのを楽しみにしています。
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