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2023.06.24
関連企画≪「ドン・ジョヴァンニ」第2回ワンコイン・プレ・レクチャー≫を開催しました!
500円で気軽に楽しく作品の予習ができるオペラ講座として毎年好評のワンコイン・プレ・レクチャー。第2回の講師には、イタリアでの生活も長く、国内外のオペラを知り尽くした、オペラ・キュレーターの井内美香さんをお迎えしました。オペラの通訳や翻訳、ライターの仕事をする傍ら、オペラの講座をひらくなど、“オペラのなんでも屋”として活躍される井内さん。「これであなたもドン・ジョヴァンニの虜~アブナイ男ほど魅力的!?」と題して、映像を交えながら、ドン・ジョヴァンニの見どころと共に、先日始まった稽古の最新情報を紹介してくださいました。
講師:井内美香さん(オペラ・キュレータ―)
モーツァルトが描く、歌劇『ドン・ジョヴァンニ』の魅力
『ドン・ジョヴァンニ』の原型となった作品として、17世紀にスペインで生まれた戯曲『セビーリャの色事師と石の客』や、17世紀後半にモリエールがかいた戯曲『ドン・ジュアン』があげられますが、これらの作品の影響を受けて作られた「オペラ」の元作品もあります。それが1787年にヴェネツィアで初演された、ジュゼッペ・ガッツァニーガ作曲の一幕構成のオペラ『ドン・ジョヴァンニ』です。この作品が、台本の元ネタとなったと言われています。それも、元の台本を読むと、頭から最後まで、キャラクターも展開も歌も、ほとんど同じなのだとか。当時、売れっ子で忙しくしていた台本作家のダ・ポンテは、ガッツァニーガの作品を参考に書き進めたそうです。
しかし、モーツァルトの描いた『ドン・ジョヴァンニ』には、元ネタとは違う、モーツァルトらしい魅力があるのです。それは、1幕最後の大きなフィナーレ。数年前にかかれた『フィガロの結婚』でも、2幕の最後に大きなフィナーレがありますが、これはモーツァルト自身の音楽的な感性を生かした構成。あれだけの大きなフィナーレを実現することができたモーツァルトは、『ドン・ジョヴァンニ』でも同じ構成を取り入れ、2幕仕立てのオペラにしたのです。
そして、モーツァルトのオペラのもう一つの魅力は、重唱の描き方の美しさです。特に美しさが際立つのが、2幕の6重唱「暗いところにたったひとり」です。ドン・ジョヴァンニの格好をしたレポレッロが捕まるまでの一連の物語の動きを、重唱として類稀なる表現力で描ききられているのです。井内さんが一番好きな場面だと話すこの6重唱は、モーツァルトの素晴らしい音楽を感じられる、大注目の場面です。
アブナイ男!?ドン・ジョヴァンニの魅力は一体?
原作となったスペインのお芝居のドン・ジョヴァンニは、女性の名誉を奪い、どのような罪でも犯すというキャラクターですが、モリエールの戯曲『ドン・ジュアン』において、社会の決まりごとを無視し、自由を謳歌し、偽善を憎む、という性格が付け足されました。ダ・ポンテとモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』には、モリエールの作品の性格が加わっています。決して良い人とは言えないドン・ジョヴァンニですが、次から次へと女性を愛しては捨てる、それがだめなら地獄からの迎えでもなんでもこい、という真っすぐな生き様から、自分の選択に対する責任感の強さや、最後まで揺るがない信念の強さを感じられます。
音楽的な部分にも、ドン・ジョヴァンニの魅力が潜んでいます。ドン・ジョヴァンニは主人公にも関らず、実はちゃんとしたアリアがないのです。技巧的な難しいものではなく、劇中歌や歌や踊りをテーマにしたもの、または演技の伴奏としてのアリアばかりです。劇中で有名な「シャンパンの歌」もまさにそうです。ですが、このようなアリアからは、その場所にいる人が実際に歌っているような、リアルな情景を感じられるという魅力があります。
ちなみに井内さんは、ビゼーの『カルメン』とドン・ジョヴァンニのキャラクター像やアリアの歌い方に、共通性を感じるのだとか。
佐渡裕芸術監督プロデュース『ドン・ジョヴァンニ』の見どころ&聴きどころ3選♪
つい先日始まったばかりの稽古場へ、井内さんも訪れられました。稽古場の風景と共に、井内さんが思う公演の見どころ&聴きどころをご紹介してくださりました!
①デヴィッド・ニースさんによる美しすぎる演出は必見!
演出家のデヴィッド・ニースさんは、台本をとことん読み込み、台本に忠実に、そして最大限に表現することで美しい舞台を作り上げる素晴らしい方だと井内さんは話します。
モーツァルト三部作の3作目にして、主人公が悪党である『ドン・ジョヴァンニ』。デヴィッド・ニースさんは「モーツァルトの描く世界の中でもっともダークであり、描くのが一番難しい。地獄落ちの責め苦のシーンはどのような表現になるのか・・・ぜひ楽しみにしていただきたい。」と語っていたそうです。
②豪華な2組のキャスト
ダブルキャストでの上演ですが、それぞれが全く違って、それぞれが素晴らしい、そんなキャスト陣に「こんなに揃うってすごい!」と井内さんも太鼓判。それぞれの魅力や特徴、期待を込めたメッセージなど、キャスト一人ずつに対して話してくださりました。
③物語のカギを握るのはあの2人?!
『ドン・ジョヴァンニ』のキャラクターをより楽しむために注目すべきは、ドン・ジョヴァンニとレポレッロの関係性だと話す井内さん。主従関係であるこの2人ですが、演出家やキャストにより描き方にはいくつかパターンがあるのだとか。
“貴族”と“従者”という役職の違いを、見た目や年齢で明確にする演出もあれば、似た雰囲気の若い男性を揃えて近しい関係にする演出、また、従者であるレポレッロが実はドン・ジョヴァンニを後ろから操るような怪しい関係に演出されることがあります。今回デヴィッド・ニースさんによって、この2人はどのような主従関係を描くのか・・・?それぞれのレポレッロがどのようにドン・ジョヴァンニをサポートしていくのか・・・?ぜひ注目です!
相関図を使って、登場人物同士の関係性やひとりひとりの性格など、詳しく説明してくださりました。
開幕までいよいよ1か月をきった『ドン・ジョヴァンニ』。オペラ史上最強の色男・ドン・ジョヴァンニが、ついに芸術文化センターにやってきます。
7月14日(金)~23日(日)、全8公演!あなたもドン・ジョヴァンニの虜になりませんか?
たくさんのご来場をお待ちしております。